高齢化社会に突入したわが国では、人間ドック受診対象者の年齢も徐々に上昇してきている。もちろん、加齢に伴って発病のリスクは増えていくため高齢者こそ健診が必要だともいえるだろうが、人間ドック及び健診での「高齢者の基準値」を考慮する必要があるのではないだろうか。退職後の生活の変化に伴って活動量の低下・食生活の変化、そしてそれによって引き起こされる高齢肥満を念頭に置いて指導を行っていく必要があるといえるだろう。
近年後期高齢者の受診者が増加傾向にあるのだが、それは健康志向の高まりを表しているといえるだろう。しかしながら、それも個人差があるといえ、各種疾患の治療効果に対するエビデンスは十分とは言えない点が挙げられる。だからこそ、一人ひとりのライフスタイルやクオリティー・オブ・ライフ(QOL)に配慮した指導も重要となってくるといえるだろう。
また、厚生労働省による特定保健指導においては、後期高齢者に対して行う指導を40~74歳と同様の指導を行うのではなく、本日の要望に応じて健康相談や指導を行える体制・環境を整えることが重要であると示している。しかし、急に指導内容を変えると 受診者の混乱を招きかねない為、一人ひとりの状況も考慮する必要があるといえる。
高齢になるほど、通院や処方された薬を服用しているという方も多い。複数の診療科を受診し複数の投薬を受けているという可能性だって考えられる。しかしながら、外来での短時間の診療ではしっかりと生活指導を受けられない場合も多い為、人間ドック健診で総合的な生活指導を受けられるというのは非常に良い機会ではないだろうか。その上で主治医への相談へ繋げることも出来、基準値から逸脱している場合には投薬状況にも注意して検診を行う必要があるだろう。アプローチの工夫も都度行いながら、認知症や転倒骨折への予防も行っていけたらより効果的であるだろう。