人と会話をするときに、自分が聴き手か話し手かの役割を意識することはあまりないと思います。私たちが普段人と話をするときには、この役割は明確に分かれていません。そのため相手の話を聞いているときにも、意識が相手ではなく、自分の思考に向きがちとなっています。その結果、相手の反応を想定することや、心の中で評価や批判をすることも多く、自分の意見を話そうと先走ってしまうのです。

普段の会話であれば、このような状態でも問題ありません。相手と自分が交互に聴き手と話し手となり、キャッチボールのように会話が進んでいきます。

しかし、人間ドック診療の現場ではそうはいきません。患者に「自分の意見を聞いてもらった」と満足してもらうためには、会話における役割の意識を変えていく必要があります。基本的に、医師は聴き手であり、患者は話し手です。医師の方は、患者が言いたいことが話せる雰囲気作りをしていかなくてはなりません。

友人などと会話のキャッチボールをしているときは、以下の五つの特徴があります。

「話をする前に、こういう流れに持って行こうと決めていくことがある」

「話をする前に『こんな反応をするだろう』『この人とは合わないだろう』と先入観を持つことがある」

「沈黙が訪れると、居心地の悪さからつい自分から話し出してしまう」

「相手の話を聞きながら『自分ならこうするのに』『それは間違っている』などと思考することがある」

「相手の話す内容が把握できたと思うと、話が終わらないうちから話し出してしまう」

これらはあくまで、一般的な会話で「ふつうに聞いている」態度です。

医師として診察を行うときには、これらの行動を取らないよう注意する必要があるでしょう。