PETドックは臓器別に検査があるのだが、今回は悪性腫瘍すなわちがんに特化してご紹介したいと思う。そもそも疾病というのは、ある臓器が生化学的変化を起こすことで病変化が始まっていく。初期段階の形態変化というのはごくわずかであり、自覚症状のないケースも多いのだ。従って、異変を感じたときにはかなり進行してしまっているという事が非常に多い。今後の医療における課題の一つとして、この「初期段階の発見」というのが挙げられるだろう。さて、この生化学的変化の代表ともいえるのが糖代謝であるだろう。糖代謝というのは、食事によって摂取されたエネルギーが各臓器へと運ばれ活動のもとになる。そして余分なエネルギーは上に備えて蓄えられ、必要な時に消費されるという仕組みのことだ。この糖代謝の働きを用いた検査を行っていく。PET検査と呼んでいる。ブドウ糖と放射性物質を結び付けた検査薬(FDG)を注射し、それが体内でどのように分布していくかを画像化して調べる検査である。全体の所要時間はおよそ2時間、被験者が検査台に登るのはおよそ20分である。一般の検診では肺がん検診・乳がん検診・大腸がん検診などのように臓器別に調べるのだが、一方PETがん検診では臓器や部位を特定せずに全身の検査を行うことが出来るのである。
近年の健康志向、特にがんに対する意識は高まりを見せつつある。自分の健康を自身で理解し管理し守ろうとする意識も高くなってきているように思う。このような背景も相まって、今後ますますPETドックが必要視されていくのではないかと思う。全国でPETドックが普及し、無症候のがんを発見し早期治療に取り掛かることが出来たらより良いだろう。このことが、将来的に死亡率の減少にもつながっていくのではないだろうか。