医師向けの外来マニュアルなどには「患者の話に共感をしながら聞く」という指南が必ずといっていいほどに書かれているそうです。共感とは、相手の気持ちを認めて受け止めることです。すべて同意をしなければいけない、支持をしなければならないという意味ではありません。「あなたはそのように感じるのですね」と、相手の気持ちを尊重し、認めてあげることが大切です。では、共感をしながら聞くというのは、具体的にはどのような態度でいれば良いのでしょうか。

共感は大原則として、「相手に合わせる」ということを意識します。これはペーシングとも呼ばれ、相手の話し方や呼吸など、ペースを合わせることを表します。

最もシンプルな方法は、「視線を合わせる」方法です。視線を合わせることで、「あなたの存在を認めています」というメッセージを発信できますし、視線の高さを同じにすることで、同じ立場であることを示すことができます。

他には、話すスピード・トーン・声の大きさも相手に合わせることが大切です。全てを同じにする必要はありませんが、例えば嬉しそうな報告をする相手には、こちらも嬉しそうな声音で返す。

深刻な話をする相手には、こちらも声のトーンを落としましょう。雰囲気を合わせることで、「話を聞いて、自分の気持ちが動かされている」ということを伝えることができます。

同じく、身ぶり手ぶりも不自然にならない程度に合わせることで効果が上がります。「ここが痛くなります」と胸を押さえる患者には、「ここですね」と同じような動作を挟みましょう。このようにペーシングを利用し、相手と「同じ」を意図的に行っていけば、「自分の気持ちを認めてもらっている、受け止めてもらっている」と感じてもらえるでしょう。